狭心症・心筋梗塞
寝ているときに頻回に息が止まると、血中の酸素濃度が極端に下がる酸欠状態を繰り返すことになります。1時間に50回以上もおこると心臓に悪影響を及ぼします。その結果、冠動脈に動脈硬化がおこり狭心症、そして冠動脈が塞がると心筋梗塞になってしまいます。
高血圧・脳梗塞・脳卒中
睡眠中の酸欠状態では酸素を取り込むために、無呼吸から呼吸を開始しようと身体に力が入り血圧が高くなってしまい、脳卒中になるリスクが高くなります。また空気の通り道である気道が狭くなったり閉塞することで、脳への酸素供給が少なくなり、脳卒中・脳梗塞になってしまうリスクも増えます。
糖尿病
睡眠時無呼吸のために脳がゆっくり休めないことにより、自律神経機能の異常や、ホルモンの分泌にも悪影響を及ぼします。交感神経系が刺激され、ストレスホルモンの分泌が増えることにより、血圧の上昇や、血糖値の上昇、体脂肪が増加して太ってしまうと考えられています。睡眠中に分泌される成長ホルモンの分泌の低下がおこり、筋肉が減って脂肪が増えやすい体になってしまい、インスリン抵抗性が上がり、生活習慣病である糖尿病になりやすくなります。またすでに糖尿病の患者さんは、病気が悪化します。
認知症
脳が低酸素状態になると、脳内に老人斑と呼ばれるアミロイドベータ蛋白質(認知症の大きな原因であるAlzheimer病の原因因子の一つで、脳にたまると脳内の神経細胞を破壊する)が増加するとの研究報告があり、睡眠時無呼吸になると認知症を発症しやすいのでないかと考えられています。
睡眠時無呼吸の治療をCPAPで行うことで認知機能が改善したとの報告もあります。また睡眠時無呼吸の人ではうつ病を合併している人が多く、CPAPで治療することでうつ病が改善したという報告もあります。
夜間頻尿
CPAPの治療前後の夜間の頻尿の回数についてですが、治療前では睡眠時無呼吸の重症度が高いほど夜間の頻尿回数が多く、CPAP治療を開始すると頻尿回数が減少するとの報告があります。睡眠時の無呼吸になると心臓に負担がかかることにより、体内の循環血液量を減らそうと、おしっこを出す利尿ホルモンが分泌がでて、夜間に頻尿になってしまうのではないかと考えられています。確かに当院でも夜中に2時間ごとにトイレに行っていた患者さんもCPAP治療で朝までぐっすり眠れるようになった方もいます。
前立腺癌・乳がん
睡眠時無呼吸は性ホルモンの分泌に悪影響を与えるので、前立腺癌や乳癌との関連性も指摘されております。
視神経障害・緑内障
通常、人は息を止めると眼圧は上がりますが、睡眠時の無呼吸発作時には、気道が閉塞するので胸腔内の圧力低下により眼圧が下がり、血液中の酸素が減り、視神経に障害を及ぼす可能性が高いとされています。睡眠時無呼吸と診断された方は、一度眼科の検診も必要です。緑内障でいびきがある方は、いびきを直すことにより緑内障の改善にもつながると考えられますので、睡眠時無呼吸の検査を受けることが推奨されます。 2017年6月11日